黑晴明大人可真是敏锐,看来我早就被识破了呢。
【黒晴明】
「この術は途中の情報を集めるためのものだ。例えこの世の終わりを迎えても、道綱様はまだ己の職務を気に掛けているようだな。」
这术法是为记录沿途的情报而设。看来即使是末日之时,道纲大人也还是对自己的本职念念不忘。
【藤原道綱】
「いえいえ。あくまでも日頃の癖です。もし皆さんの気に障るようでしたら、すぐに術をやめます。」
黑晴明大人过奖了。这不过是出于日常的习惯。若是让诸位感到不适,我收了这法术便是。
【黒晴明】
「その必要はない。蛇神を相手取るには、情報が多いほど有利だ。かつて住んでいた、よく知っている場所でも、今も昔と変わっていない保証はどこにもない。」
那倒不必。对付蛇神,我们了解到的情报越多则越有利。即使是曾经生活过的熟悉之地,如今也不能保证就一定与从前无异。
【藤原道綱】
「ははは、黒晴明様はやはり考え方が周到ですね。」
哈哈哈,黑晴明大人果真深谋远虑。
【黒晴明】
「道綱様ほど用心深くはない。」
还是道纲大人心思更为缜密。
【蝉氷雪女】
「……黒晴明様はどうしてあの男と意気投合しているのでしょう……」
……黑晴明大人怎么和他聊得愈发投机了……
【大天狗】
「ん?そうか?むしろ雰囲気が悪化しているように見えるが。」
诶?有吗。我怎么觉得气氛开始不对了起来。
その時、ほぼ聞き取れないほど小さな音が聞こえた。
恰在此刻,一声几不可闻的异响传来。
【黒晴明】
「こんな時に結界に異変か?いつの間に……」
结界在此时出现了异动?那处什么时候被……
【大天狗】
「黒晴明様、危ない!」
黑晴明大人,小心!
大天狗の声で黒晴明は現実に引き戻された。目の前を風刃が通り過ぎ、攻撃を仕掛けてきた蛇魔を吹き飛ばした。その時、一行の足元の大地がひび割れ、各所に隠れていた悪鬼達は一目散に逃げ出した。
大天狗的声音拉回了黑晴明的思绪,一道风刃掠过他眼前,一条蓄势进攻的蛇魔被击飞了出去。与此同时,众人脚下的土地开始颤动崩裂,藏匿在各处的恶鬼四散而逃。
【天邪鬼赤】
「逃げろ、逃げろ!!助けて!!」
快逃,快逃——救命——
【天邪鬼青】
「待て!!一緒に……!!」
等等我——我们一起——
【天邪鬼黄】
「皆を守りたい……けど!!」
我也想保护大家,可是——
天邪鬼達の言葉が終わる前に、周囲は突然暗闇に包まれた。声でしか仲間の居場所を知ることができない。暗闇の中、赤い目がゆっくりと開き、高い場所から彼らを見下ろす。
天邪鬼们的话音未落,四周突然变得一片漆黑,大家仅能凭借声音分辨各人所在的方位。黑暗之中,一只猩红的眼瞳缓缓睁开,居高临下地看向他们所在的方向。
【大天狗】
「この地に配置された蛇魔だ!な……天邪鬼達が……」
是驻守在此地的蛇魔!什么……天邪鬼他们……
【藤原道綱】
「彼らは弱いから、蛇目に睨まれると一時的に生命力を奪われ、石像のようになってしまいます。早くこの蛇魔を始末しないと、この辺りの命は全てあいつに力を吸収されてしまいます。」
他们力量低微,被蛇瞳凝视之后便暂时被夺走了生命力,化为了类似石像般的存在。若我们不尽快解决这条拦路的蛇魔,恐怕周遭所有的生灵都会被它汲取力量。
【大天狗】
「ならば、一気に始末してみせる!」
那便一鼓作气,干掉它们吧!
【黒晴明】
「大天狗、早まるな。この蛇魔の凝視はとても強い邪力を帯びている。もし目が合えば、おそらくすぐに逃げきれなかった天邪鬼達のような状態になるだろう。」
大天狗,不要贸然战斗。这条蛇魔的凝视带有极强的邪性,若是目光与它直接接触,恐怕很快就会变得和那些没来得及逃走的天邪鬼们一样。
【大天狗】
「そんな。」
什么?
【黒晴明】
「私の霊力を帯びた帯で目を隠せば、しばらくはもつはずだ。ヤマタノロチは何を企んでいるか分からない。彼が放った蛇魔には、きっと我々の知らない秘密がまだたくさん隠されているだろう。しかと心に留めておけ。何が起きても目を合わせてはいけない……」
以带有我灵力的绸带蒙住双眼,应该能够支撑一段时间。八岐大蛇心机颇重,他所放出的蛇魔,一定还有许多我们所不知晓的秘密。切记,不论发生什么都不要与这家伙有直接的目光接触……
【大天狗】
「はい、黒晴明様。」
是,黑晴明大人。
【黒晴明】
「皆、ここは各自の得意分野に応じて、戦いでの役割を決めておこう。」
诸位,我们依照各自所长,简单分配一下作战的方式吧。
【大天狗】
「我は風を通じて皆の動向を感知できる。上空の戦況は我に任せろ。」
我凭借风声就能够辨别各方的动向,就由我来控制上方的战局。
【蝉氷雪女】
「私は温度から方向を知ることができる。地上の皆を補佐するわ。」
我感知温度就能辨别方位,所以就为地面上的各位提供帮助。
【藤原道綱】
「目を隠したら、私は方向が分からなくなります。でも黒晴明様と協力して結界を維持することはできます。」
蒙住眼睛后,我很难辨别方向,但协助黑晴明大人继续维持这个结界还是绰绰有余。
【黒晴明】
「よし。これは壮絶な戦いになる。皆、頼んだぞ!私と道綱様は引き続き結界を維持し、蛇魔の邪気の侵食から皆を守る。同時に皆と共にやつを討伐する!」
好,这一战来势凶猛,便拜托大家了!我与道纲大人继续维持庇护结界,确保大家不被蛇魔的邪气侵蚀,并与诸位合力将它击倒!
【鬼女紅葉】
「……」
【黒晴明】
「紅葉、まだ何か用か?」
红叶,还有什么事吗?
【鬼女紅葉】
「あなたのことは誰にも渡さない……だから……私もあなたを守るわ。」
我可不会让你落到他人手中……所以……我也会保护你的。
【黒晴明】
「そういうことか……ありがとう。」
既然如此……多谢。
【鬼女紅葉】
「でも覚えておいて……これは全て、あなたの体を、魂を独占するため……決して優しさなんかじゃない……」
但请记住……这一切都是为了我能够独占你的身体……你的灵魂……而非是我的好心……
【大天狗】
「善は急げだ。すぐに決着をつけましょう、黒晴明様!」
事不宜迟,速战速决吧,黑晴明大人!
黒晴明一行が蛇魔に総攻撃を仕掛ける。皆それぞれ大技を決めたが、どれだけ強烈な攻撃を浴びても、巨大な体を持つ蛇魔にとっては痛くも痒くもない。
黑晴明一行人与蛇魔缠斗起来,一开始各方攻击势头正猛,然而众人强势的攻击对于身形庞大的巨蛇而言不值一提。
【大天狗】
「刃羽の……くそ!」
羽刃暴……可恶!
上空にいた大天狗は一番に攻撃された。蛇魔の体に生えている棘が放たれ、大天狗の翼を掠めて飛んで行った。しかし急に走った激痛のせいで彼は均衡を失い、そのまま一直線に落下した。幸い、黒晴明がすぐさま呪符を放ち、彼を危機から救った。
位于上空的大天狗最先受到袭击,蛇魔身体上的飞刺擦过了他的羽翼,突如其来的剧痛令他失去平衡,从空中直直下落。幸而黑晴明及时抛出符咒将他护住,解除了他的危机。
【黒晴明】
「大丈夫か、大天狗。」
可要打起精神来,大天狗。
【大天狗】
「黒晴明様……」
黑晴明大人……
視界が制限されているため、なかなか弱点を見つけられず、すぐに巨蛇に有利な状況になった。このままではいけないと誰もが悟ったが、限られた時間の中で、誰も戦況を逆転する方法を見つけられなかった。
视线受到限制,巨蛇的弱点也极难被察觉,很快巨蛇便占据了上风。虽然大家皆心知肚明这样下去绝非长久之计,但一时间竟也难以想出能够逆转战局的方法。
【蝉氷雪女】
「ふふ……ふふふ……消えなさい……皆消えなさい……!!!」
呵呵呵……呵呵呵……消散吧……都给我消散吧……!!!
【大天狗】
「雪女……なぜ急に……」
雪女……你怎么突然……
【藤原道綱】
「まずい、どうやら雪女様はもうこれ以上巨蛇の侵食に耐えられないようです……」
糟糕,看来雪女大人是在巨蛇的影响下有些支撑着不住了……
【大天狗】
「そんな。」
什么?
【黒晴明】
「蛇魔と目が合わなくても、冷静さを失えば、邪神の力に影響される恐れがある……結界の力も、じきに尽きてしまいそうだ。視界を奪われた今、全力を出すことができない。まずは巨蛇の目を何とかしなければ、有効な攻撃は期待できない。」
就算不与蛇魔对视,若是内心失去平静,还是有可能被邪神之力影响心智……看来结界的保护之力已经所剩无几了。现在我们视野受到限制,无法发挥全力,看来唯有从巨蛇之眼入手,从此处击破,才有可能达到奇效。
【大天狗】
「黒晴明様、ここは我が……」
黑晴明大人,就让我……
【黒晴明】
「焦るな。道綱様、雪女は頼んだ。」
先不要心急。道纲大人,先拜托你照顾好雪女了。
【藤原道綱】
「ご安心ください、戦闘の支援は困難ですが、誰かを守ることはできます。」
没问题,虽说战斗我难以帮忙,但简单的保护不在话下。
【蝉氷雪女】
「近寄らないで……近寄らないで!」
不要靠近——不要靠近我!
【鬼女紅葉】
「ちっ、見苦しいわ、彼女には一体何が見えているのかしら……」
啧,这副模样,真不知道她看见了什么啊……
【藤原道綱】
「紅葉さんはまだまだ正気のようですね。」
红叶小姐的神智看起来还很清醒嘛。
【鬼女紅葉】
「ふふ、この件を片付けたら愛しいあの人を独占できると思うと、胸がいっぱいになるの……私を止められるものは何もない……」
呵呵,我一心念着解决完这件事,独享我的心上人……可没有什么能够阻拦我……
【黒晴明】
「本題に戻って。大天狗、この後上空で巨蛇の注意を引きつけてくれ。その隙に私が霊力を込めた呪符をやつの目の中に放つ。」
言归正传。大天狗,待会就由你来从上方吸引巨蛇的注意,之后由我将带有灵力的符咒送入它的眼中。
【大天狗】
「御意、黒晴明様。」
领命,黑晴明大人。
【黒晴明】
「くれぐれも無理はするな。異変があれば直ちに地上に戻れ、分かったか?」
切记不要逞强,若是有什么异样立刻返回地面,听见了吗?
【大天狗】
「……はい。」
……是。
少し休んだ後、大天狗は空へと飛び立った。獲物の気配に気づいた巨蛇は、彼に気を取られている。その時、黒晴明が高く飛び上がり、空中で止まった。そして手に持った呪符に霊力を注ぎ込む。
经过简单的休整后,大天狗率先飞上了天空,巨蛇嗅到猎物的气息,果不其然被其吸引而去。就在此刻,黑晴明一跃而起,亦随之悬于空中,手持符咒,凝神聚力。
【大天狗】
「黒晴明様!今だ!」
黑晴明大人!就是现在!
しかし敵の急所に打撃を与える直前に、一行が気づかないうちに後ろに潜伏していたもう一匹の巨蛇が現れた。背後から強烈な威圧を感じ、すぐに一行は程度こそ違うが、皆幻覚に襲われた。悲鳴、風音、号泣が耳元で響き、彼らを押し潰そうとしているかのようだ。
然而就在感觉这一击将要击中要害之时,几人都未注意到身后蛰伏的另一条巨蛇。强烈的压迫感瞬时从后方传来,一时间众人眼前都出现了不同程度的幻觉。尖叫声,风声,哀嚎声充斥在耳畔,仿佛要将他们逐个击溃。
【黒晴明】
「気をそらすな、大天狗!」
不要分神,大天狗!
途切れ途切れの黒晴明の声は、まるで調子外れの旋律ようだ。大天狗は一度深呼吸して、前方に最後の風刃を放った。
黑晴明的声音断断续续,仿佛错音的曲调,大天狗深吸了口气,向着前方挥出了最后一道风刃。
【大天狗】
「黒晴明様!!」
黑晴明大人——
強く圧迫され、黒晴明の目隠しの帯が千切れてしまった。しかしそれでも彼は手を止めなかった。
巨大的威压之下,黑晴明用于覆面的绸带终于被震碎,而他却并未停下手中的动作。
【黒晴明】
「こんなところで……負けるわけには……!臨、兵、闘、者、皆、列、陣、在、前、急急如律……」
怎么能……在这里就失败……!临、兵、斗、者、皆、列、阵、在、前,急急如律——
まばゆい光が収まると、巨蛇は咆哮し、ようやく撤退していった。その時もうこれ以上耐えきれなくなった黒晴明が、脱力して空から落ちてきた。皆危機は去ったかと思ったが、もう一匹の巨蛇がもう一度襲ってきた。大天狗はなんとか黒晴明のそばに行こうとしたが、目の前に赤い人影がいることに気づいた。黒晴明の目の前に現れた巨蛇がまっすぐに彼の目を見つめる。まるでどうやって彼を呑み込もうか考えているようだ。しかし紅葉が突然彼らの間に現れた。
耀眼的白光过后,巨蛇发出一声咆哮,终于暂时撤后。而此时的黑晴明再也支撑不住,脱力从半空中跌落。就在众人以为危机将要解除,另一条巨蛇却再度袭来,大天狗奋力向黑晴明所在的方向飞去,却发现面前多了一道红色的身影。黑晴明面前的巨蛇凝视着他的双眼,似乎在思考如何将他吞噬,但红叶却猝不及防出现在他们之间。
【黒晴明】
「紅葉……!」
红叶……你……!
落ちていく中、黒晴明は最後の呪符を投げ、紅葉を守ろうとした。しかし彼女には届かず、巨蛇の瞳に刺さった。
黑晴明虽仍在坠落,但却还是挣扎着掷出最后一道符咒,想要保护红叶,但却错过她刺入了巨蛇的眼瞳。
【鬼女紅葉】
「この呪符は、やはり私を守るために……はははははは……黒晴明様……あなたは……」
这道符咒,果然是要保护我……哈哈哈哈哈哈——黑晴明大人……你还是……
【黒晴明】
「紅葉!」
红叶!
混乱の中、黒晴明は目の前に赤い色が現れるのを見た。しかしその姿は、徐々にぼやけていった。
混乱之中,黑晴明看到自己面前出现了一抹鲜红,但那个身影,却在渐渐变得模糊。
【鬼女紅葉】
「どんな時でも、あなたを見ることさえ……できれば……」
无论什么时候,只要能看到您……就……
近くにいた大天狗と雪女が嵐と氷の刃を召喚し、巨蛇に攻撃を仕掛ける。強烈な力が四方から迫り、紅葉の言葉は強風でかき消された。
不远处的大天狗和雪女正召唤出风暴与冰刃向巨蛇攻击而去。强烈的力量从四周掠过,红叶的话语被狂风声淹没,变得支离破碎。
【鬼女紅葉】
「ふふふ……この紅葉の舞で、あなた達の力になるわ!」
呵呵呵……就让这红叶之舞,助你们一臂之力吧!
強烈な力の衝突の後、黒晴明と紅葉は無事に地上へと降り立った。それと同時に巨蛇も退散した。周囲は段々と光を取り戻し、静寂が訪れた。
在剧烈的力量冲撞后,黑晴明与红叶平安回到了地面。巨蛇也在此刻退去,四周逐渐恢复了光亮,一切归于寂静。
【黒晴明】
「紅葉……」
红叶……
紅葉からの反応はなかった。
然而对方却毫无回应。
【藤原道綱】
「紅葉さんはさっきの戦闘の中で、力を使い切ってしまったのでしょう。」
红叶小姐在刚刚的战斗中,耗尽了大部分的力量吧。
【大天狗】
「巨蛇がいなくなった後、さっきの天邪鬼達も徐々に回復してきたようだ。どうしたものか……」
巨蛇退去以后,刚刚那些天邪鬼都逐渐恢复了过来,为何……
【黒晴明】
「さっきの一撃で、彼女は大量の力を失った。すぐには回復しないだろう。私が霊力を使って、彼女の回復を手伝ってみよう。彼女の身体の中には、私の呪術がまだ残っている。一時的に意識を失っているとはいえ、深刻な状態ではない。」
刚刚那一击后,她失去的力量太多,一时间难以复原。我已以灵力协助,试着让她自行恢复。她的身体里还留存有我的咒术,除了暂时失去了意识,没有大碍。
【藤原道綱】
「巨蛇は既に撃破され、陣眼も露わになりました。黒晴明様、ここに長くとどまるべきではないかと。急いで浄化の儀式を行いましょう。」
巨蛇已被击败,阵眼也已显现出来。黑晴明大人,此地不宜久留。我们还是尽快进行净化仪式吧。
【黒晴明】
「ああ、道綱様の言う通りだな。しかしこの陣眼の中に邪力は極めて強大だ。少し時間がかかるだろう。大天狗、雪女、先に紅葉を連れて、約束の場所に行け。私と道綱様は、この場所を徹底的に浄化した後で合流する。」
嗯,道纲大人说得不错。但这阵眼中的邪力极为强大,恐怕需要花费一段时间了。大天狗,雪女,你们带着红叶先尽快抵达约定的目的地。我与道纲大人将此地彻底净化后,便立刻与你们会合。
【大天狗】
「分かりました、黒晴明様。」
明白,黑晴明大人。
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